何が歯科心身医学で、歯科心身医学とは何なのでしょうか。歯科患者の多くは身体的疾患とその原因を持っています。
歯科治療を受けに来た患者が、精神科的な問題である場合は2つ考えられます。
①治療すべき歯科疾患があり、有効な歯科治療を行うためには精神科医の援助が必要なとき。すでに精神科医療を受けている患者では、
主治医が精神科医と連絡を取り合って、しかるべき歯科治療をすすめていけばよいです。
また、診察したところ、歯科疾患はあるが、精神科疾患を合併していることを発見することもあります。
②歯科治療を求めてきたが、その訴えそのものが精神症状であり、かつ歯科的治療が必要なときです。どのように精神科を紹介しようかと困るかもしれません。
精神症状は1つだけポツンと出てくることはありません。必ずいくつかの症状がセットとなってあらわれます。症状は、あるまとまり、一定の組み合わせとなってあらわれ、
どの症状とどの症状がセットになりやすいということもあります。こうして、精神現象としての、あるまとまった形をつかむことが臨床では重要であり、
患者の病像をトータルに把握していきます。この精神現象のまとまった形を症候群、状態群と呼び、いくつかのパターンを熟知しておくことが望ましいです。
例えば、歯科領域の訴えが含まれることが多いものとしては、うつ状態、心気状態、幻覚妄想状態、神経衰弱状態、不安状態などです。
歯科医にとっては、歯科領域の訴え以外に、患者がどのような精神症状を訴えているのかに注目することが必要です。
また、精神科の疾患でも、精神的症状のほかに、けっこう身体的症状を伴っていることも忘れてはなりません。
患者心理
病気をして、安全や自尊心を脅かされ、治療や検査の過程で自分のプライバシーを曝さなければならないという体験は、耐え難い感情を引き起こします。
病気をするという出来事は、自立している人にとって屈辱的な体験です。そこには、医療スタッフ(支配する側)VS患者(従順に依存する側)という枠組みがあります。
患者は、医療スタッフにまったく依存せざるを得ないし、生命を委ねなければなりません。
こういう状況では、容易に退行状態が生じるのも無理がありません。発達段階を逆にたどり、精神的に、もしくは象徴的に満足と安心を得やすい時期にまで戻ってしまいます。
このことは、幼少時期に封印していた葛藤、愛情や注目や保護を求める葛藤、恐怖や嫉妬や羨望などの否定的な情動を呼び覚まします。
こうした患者の心理を理解し、共感的関係を作っていくことが重要になります。
これは、ラポール、すなわち、精神療法において、治療者と患者の間に気持ちの通じ合う共感的関係ができることです。
歯科医などのお医者さんにも、患者に対する心のケアが注目されつつあることを考えると、高度の医療技術の勉強と人間に対する勉強が必要になり、
医師はより高度な仕事になっていって気がします。